こんにちは、兵庫県加古川市・播磨町で学習塾「ニードモアアカデミー」を運営している三浦です。
文部科学省から最新の全国学力テストの結果が公表されています。今回はこの結果から見えてきた、中3国語の現状と、家庭・塾でできる対応について、土山校担当の河村と一緒に考えてみました。
中でも特に気になったのが、「中3国語の記述式問題、正答率25%」という数字です。一方で、漢字の読み書きや語句の意味といった「短く答える問題」では正答率が7割を超えています。知識としてはちゃんと身についているのに、「自分の言葉で書く」となった瞬間に4人に1人にまで一気に落ちてしまう。今、子どもたちの中で何が起きているのか。順を追ってお話しします。
「短答70%・記述25%」が示す、子どもたちの学力の実態
全国学力テストは、文部科学省が小6・中3を対象に毎年実施している、いわば全国規模の学力調査です。今回の中3国語の結果を見ると、「漢字の読み書き」や「語句の意味」といった短答式の問題では、正答率が7割を超えていました。基礎的な知識としては、ちゃんと身についているということです。
ところが記述式――「物語を読んで、自分の考えとその理由を書きなさい」というような問題になると、正答率が25%まで落ち込みます。さらに気になるのが、「間違えた」のではなく「そもそも何も書けずに空欄で出している」子がかなりの割合でいるということです。
教室の現場でも、これと同じ感覚を強く感じます。口頭で「これってどういう意味?」と聞けば「あ、それは○○だよ」とちゃんと答えられるのに、いざ「じゃあ書いてみて」と言うと手が止まってしまう子。決して珍しくありません。
知識として頭の中には入っている。でも、それを自分の言葉に組み立てて、文字にして外に出すという作業ができない。これが、25%という数字の正体だと感じています。
なぜ今、子どもたちが「書けない」のか
ではなぜ、これほど書けない子が増えているのでしょうか。
自分の言葉に変換する機会が減っている
現代の子どもたちが情報に触れる時間そのものは、ものすごく長くなっています。動画、SNS、ゲーム。一日の中で「何かを受け取っている時間」は十分にあります。
ただ、そのどれもに共通しているのが、「受け取った情報を自分の言葉に変換する必要がほぼない」ということです。LINEでも、短いやりとりや絵文字、スタンプだけで会話が成立してしまう。だから「言葉を組み立てる」という作業をする機会が、生活の中から少しずつ減ってきている。
言語能力そのものが落ちているというよりは、言葉を「使う筋肉」を鍛える場面が減ってきている、という方が現実に近い気がしています。
学校でも「考えて書く」時間が圧縮されやすい
これは現場の先生たちの責任ではなく、構造的な問題です。2021年の学習指導要領改訂以降、中学校で扱う学習内容は明らかに増えました。一方で、授業時間そのものは大きく変わっていません。
量が増えれば、当然「じっくり考えさせる」よりも「まずは進める」という方向にならざるを得ません。結果として、教科書の中の「自分の考えを書く」場面に、ゆっくり時間をかけて取り組むというのが難しくなってきている。
家庭でも学校でも、「自分の考えを言葉にして外に出す」場面が両側から減っている。その積み重ねが、25%という数字に表れているのではないかと感じています。
家庭と塾でできる、「書く力」の鍛え方
ではここからは、具体的に何ができるのかという話です。
問題を解いた後の「一言メモ」習慣
まず、中高生本人にやってほしいのが、問題を解いた後に「なぜその答えになるのか」を、一言だけ自分の言葉でノートに書く習慣です。本当に一行で構いません。
たとえば数学で方程式を解いたら、「この部分を x と置いて、こことここが等しいから式を立てた」と、自分が辿った思考の手順を一行だけ余白にメモする。国語なら、文章を読んだ後に「この段落で筆者が言いたいのは、要するにこういうこと」と一文だけ書いてみる。英語の長文読解にも同じ発想が使えます。
正解か不正解かだけを見て丸をつけて終わりにする勉強と、「自分はどう考えてその答えに至ったか」を一回外に出す勉強。一問あたりにかかる時間は少し増えますが、その後の伸び方がまったく変わってきます。
模範解答は「型」を分析する
「そもそも何を書けばいいかわからない」という子にとって有効なのが、模範解答の「型」を分析する勉強です。
ここで大事なのは、答えを丸暗記することではありません。「結論が先に書かれているな」「次に根拠が来ているな」「本文のこの部分を引用しているな」と、書き方の構造を分析することです。
教室では、「結論→理由→具体例」の三点セットを意識させるところから始めることが多いです。「何を書くか」を考える前に、「どの順番で書くか」を先に決める。それだけで、書き出せる子が一気に増えます。
「書けない」のではなく、「書き方を知らないだけ」の子は、本当に多いと感じています。
家庭での「なんで?」も大きなトレーニング
小学生の保護者の方であれば、日常会話の中で「どうしてそう思ったの?」と理由を尋ねる場面を少し増やすだけでも、いいトレーニングになります。
勉強の話に限る必要はありません。一緒に観た映画、読んだ本、最近あった出来事。何でもいいので、自分の考えを口に出して、理由まで言葉にする。そういう習慣のある子は、いざ書く場面になっても、頭の中で文章を組み立てる土台ができていると感じます。
AI時代に「自分で考えて書く力」がさらに重みを増す理由
この記述式25%という数字は、これからもっと深刻な意味を持ち始める可能性があります。
ChatGPTをはじめとした生成AIに頼めば、レポートも読書感想文も、そこそこの形にした文章を返してくれる時代です。これに頼るほど、「自分で考えて、自分の言葉で書く」というプロセスを丸ごとスキップできてしまう。
文科省も、今年2月に出した資料の中で「認知的オフロード」という言葉に触れています。AIに思考を任せることで、自分で考える機会が減り、結果として思考力そのものが弱くなっていくのではないか、という懸念です。
次期学習指導要領の議論でも、思考力・判断力・表現力をより重視する方向、つまり「自分の考えを言葉で表現し、捉え直し、吟味しながら深めていく力」を育てる方向が、これまで以上に明確になってきています。
情報を集めたりまとめたりする作業は、これからどんどんAIが担っていきます。でも、「集まった情報を見て、自分はどう考えるか」「どんな立場で何を言うか」という部分は、最後まで自分の中にしか答えがありません。ここをサボってきた子と、地道に鍛えてきた子の差は、これからの10年で目に見える形で広がっていくのではないかと感じています。
まとめ
最後に、今回の話をまとめておきます。
- 中3国語の記述式正答率は25%、過去最低の数字。短答式70%との差が大きい
- 知識はあるのに「自分の言葉で書く」となると書けない子が増えている
- 家庭でも学校でも、自分の考えを言葉に変換する機会が減っているのが背景
- 中高生本人がやれることは、問題を解いた後に「なぜそうなるか」を一言書く習慣
- 苦手な子は、模範解答の「型」を分析する。「結論→理由→具体例」を意識する
- 小学生の家庭では、日常会話で「なんで?」と理由を尋ねるだけでも十分なトレーニングになる
- AI時代だからこそ、「自分の頭で考えて自分の言葉で表現する力」の価値はさらに上がっていく
「うちの子、文章問題や記述になると急に手が止まるんです」というご相談をいただくことが、本当に増えています。お子さんの記述力や思考力が気になる方は、お気軽にニードモアの教室にご相談ください。お子さんの状況に合わせて、一緒に考えさせていただきます。
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