こんにちは、兵庫県加古川市・播磨町で学習塾「ニードモアアカデミー」を運営している三浦です。
以前、「聴く塾便り」では、純文学の魅力について土山校担当の河村と語り合いました。

「純文学って面白そう!」と興味を持ったものの、「結局、何を読めばいいんだろう?」という疑問が残りました。
そこで今回は、新シリーズ「おすすめ本紹介」の第1回として、河村に1冊の本を紹介してもらいました!
純文学愛好家である河村先生が選んだのは、夢野久作の傑作選『死後の恋』。
独特の文体と不気味な世界観が魅力のこの作品について、詳しく解説していきます。
今回紹介する本:『死後の恋』夢野久作傑作選
短編集という読みやすい形式
河村が今回選んでくれたのは、新潮文庫から出版されている『死後の恋』という夢野久作の傑作選です。
この本の特徴は、短編集という形式であること。表題作の「死後の恋」を含め、10作品が収録されています。
長編小説と違い、1つの話が比較的短くまとまっているため、読書に慣れていない方でも手に取りやすい構成になっています。
夢野久作とは?
夢野久作は、独特の文体で知られる日本の小説家です。
この傑作選には、夢野久作作品の中でも比較的読みやすいものが集められていますが、それでも独特の世界観は健在。
河村曰く、「夢野久作自体がちょっと独特の文体なので、そこがはまるかはまらないかはありますが、それこそが一番の魅力でもあります」とのこと。
夢野久作の「独特な文体」とは?
三人称と一人称の違い
小説には大きく分けて2つの視点があります。
三人称視点
- 第三者の目線で物語を描く
- 以前紹介した芥川龍之介の「羅生門」がこのタイプ
- 「下人がどうこう」「街の状態がどうこう」という客観的な描写
一人称視点
- 登場人物自身が語る形式
- 「私は〜」「僕は〜」という主観的な描写
- 夢野久作作品の多くがこのタイプ
一人称視点の小説自体は珍しくありませんが、夢野久作の語り口調には大きな特徴があります。
カタカナ混じりの不思議な文章
夢野久作作品の最大の特徴は、カタカナが独特に使われていることです。
通常、カタカナは外来語に使われるものですが、夢野久作の文章では:
- 本来は漢字で書かれるべき言葉がカタカナになっている
- 「本当に感謝します」の「本当」がカタカナの「ホントウ」になっている
- 情景が想像しにくい表現が多い
例えば、「死後の恋」の冒頭は「ハハハハハ。イヤ……失礼しました。」という始まりです。
なかなか見ない始まり方ですよね!
カタカナ表記の意図
このカタカナ表記は、単なる遊びではありません。
「死後の恋」で言えば、語っている人物の精神状態を表現するための手法なのです。
文字の表記方法によって、登場人物の心理状態や雰囲気を読者に伝える──これが夢野久作の独特な文体の魅力です。
表題作「死後の恋」
壮大なテーマ
表題作である「死後の恋」は、ロシア革命直後という歴史的な時代背景を持つ作品です。
王家の宝石にまつわる奇妙な体験を描いた物語で、テーマ自体が非常に壮大です。
河村イチオシ:「瓶詰地獄」
10作品の中で最もおすすめ
河村に「この短編集の中で、しいて言うならどれが一番好きか?」と尋ねたところ、「瓶詰地獄」という答えが返ってきました。
この作品は、短編集の2番目に収録されている作品です。
「瓶詰地獄」のあらすじ
物語は、無人島に流れ着いた兄と妹の話です。
構成が非常に独特で:
- ある村に3つのボトルレターが流れ着く
- 海洋研究所が探していたものと判明
- 「第一の瓶」「第二の瓶」「第三の瓶」という形で話が展開
ボトルレターという形式を取りながら、兄妹の運命を描いていく構成になっています。
なぜ「瓶詰地獄」がおすすめなのか
河村が特にこの作品を推す理由は:
心理描写の秀逸さ
- 情景描写が非常に優れている
- 登場人物の心の動きが繊細に表現されている
読みやすさ
- 表題作の「死後の恋」よりも分かりやすい
- 純文学初心者でも比較的理解しやすい
キリスト教的要素
- 若干キリスト教の宗教観が入ってくる
- その知識があるとより深く楽しめる
この本をおすすめしたい人
ハードルは高め、でも刺さる人には深く刺さる
河村によると、この『死後の恋』傑作選は、万人受けする本ではないとのこと。
おすすめできる対象は、以下のような方々です:
1. 純文学に慣れ親しんでいる人
いきなり読むにはややハードルが高いため、すでに純文学を何冊か読んだことがある方に向いています。
「もうちょっと変わったものが読みたいな」と思っている読書経験者におすすめです。
2. ホラーや不気味系が好きな人
以下のようなジャンルが好きな方には特に刺さる可能性が高いです:
- 「意味が分かると怖い話」系
- 「人コワ」系
- ホラーや不気味な雰囲気の作品
- ミステリー要素のある作品
夢野久作の作品には、独特の不気味さと美しさが同居しています。
刺さる層は限定的だが、その分深く楽しめる
「誰にでもおすすめ」というタイプの本ではありませんが、逆に言えば、コアなファン向けの作品とも言えます。
上記の条件に当てはまる方であれば、きっと深く楽しめるはずです!
本の選び方:あなたに合った一冊を見つけるには
周りの人におすすめしてもらう
本を選ぶ方法はいろいろありますが、手っ取り早いのは周りの本好きな人におすすめしてもらうことです。
今回の企画も、まさにそのコンセプトですね!
ニードモアアカデミー土山校の生徒たちは、講師の河村に直接おすすめを聞くことができますね!
(ただし、河村のおすすめはややヘビーなものが多いかもしれないとのことww)
評判の良い本を選ぶ
もう一つの王道的な選び方は、評判の良い本を選ぶことです。
具体的には:
文学賞を受賞した作品
- 直木賞受賞作
- 芥川賞受賞作
- その他の文学賞受賞作
これらの作品は、一定の評価を得ているため、比較的安心して読むことができます。
書店のフェアコーナー
- 「〇〇フェア」として特設コーナーに並んでいる本
- 書店員のおすすめコーナー
- ベストセラーコーナー
書店がピックアップしている本は、万人受けする傾向にあるため、初心者にもおすすめです。
表紙で選ぶ
河村が実践しているのが、表紙買いという方法です。
「絵が好みだったから取ってみる」というシンプルな選び方ですが、これが意外と有効なのです。
出版社によって装丁が違う
同じタイトルの本でも、出版社によって表紙デザインが異なります。
河村は、同じ作品でも「より気に入る表紙の方で買う」こともあるそうです。
表紙のデザインは、その本の雰囲気を表していることも多いため、直感で選ぶのも悪くない方法ですね!
CDでもジャケ写買いってありましたよね!^^
知っている作家から選ぶ
すでに読んだことのある作家がいれば、その作家の他の作品を読んでみるのもおすすめです。
作家にはそれぞれ独特のスタイルがあるため、一冊気に入ったら他の作品も楽しめる可能性が高いです。
『死後の恋』はどこに位置する本なのか
万人受けフェアには並ばない
今回紹介した「死後の恋」は、書店の万人受けフェアには並ばないタイプの本です。
むしろ、「もっとディープな純文学が読みたい」という層に向けた作品と言えるでしょう。
だからこそ刺さる人には刺さる
万人受けしないということは、裏を返せば個性が強いということです。
変わり種を求めている方、独特の世界観に浸りたい方には、間違いなく響く作品です。
おすすめシリーズ!次回もお楽しみに
継続的に本を紹介していきます
このシリーズではこれからもタイミングを見て、河村や三浦がおすすめする本を紹介していく予定です。
次回はどんな本が登場するのか、お楽しみに!
読書は、新しい世界への扉を開いてくれます。
今回紹介した「死後の恋」が気になった方は、ぜひ手に取ってみてください!
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