こんにちは、兵庫県加古川市・播磨町で学習塾「ニードモアアカデミー」を運営している三浦です。
塾講師の仕事と聞いて、まず何を思い浮かべますか?
おそらく多くの方が「成績を上げること」「勉強を教えること」と答えるでしょう。
しかし、実は成績向上のために一番大切なのは「教え方」ではないのです。
今回から2回シリーズで「塾講師が科目指導以外で大切にしていること」をテーマに、普段私たちがどのような視点で生徒たちと接しているのかをお話しします。
part1では「関係性と環境」について、part2では「動機づけと自立支援」について解説していきます。
科目指導の前に必要な「見えない土台」
教え方以上に大切なもの
もちろん教え方も重要です。しかし、その前提として絶対に必要なものがあります。
それが今回お話しする「科目指導以前の土台作り」です。
どんなに素晴らしい授業をしても、この土台がしっかりしていないと効果が出ません。逆に言えば、この土台さえしっかり作れていれば、授業の効果は何倍にも高まるのです。
科目指導以外で大切な4つの要素
今回のpart1では、以下の要素について詳しく解説します:
- 塾講師という「第三の大人」としての立ち位置
- 小さな約束を守ることによる信頼関係構築
- 生徒の状態を読み取る観察眼
- 言葉の使い方が生徒の可能性に与える影響
- 学習環境の整備が示す塾の本質
塾講師は生徒にとっての「第三の大人」
親とも学校の先生とも異なる特別な存在
生徒にとって塾講師はどのような存在でしょうか?
家には親がいて、学校には先生がいます。そして塾には私たち講師がいる。この三者の中で、実は一番生徒が本音を言いやすいのが塾の講師であったりするのです。
親の立場:生活全般の責任者として「ちゃんとしなさい」というような指導になりがち
学校の先生の立場:集団の中での教育者として、一人ひとりにじっくり向き合う時間が限られる
塾講師の立場:その子個人とじっくり向き合える。特に個別指導では毎回同じ講師が担当するため距離が縮まりやすい
「第三の大人」だからこそできる関わり方
「親には言えないんですけど…」「学校の先生には相談しづらくて…」
このような前置きで相談を受けることは珍しくありません。
例えば、志望校で悩んでいる生徒が学校の先生に「今の成績じゃ無理」と言われた場合、私たち塾講師は以下のような関わりができます:
- 否定するでもなく、無責任に応援するでもない
- 現実的な道筋を一緒に探せる
- 「その学校に合格するためには何が必要か」を具体的に考えられる
この特権的なポジションを意識的に活用することが、科目指導の前提となる信頼関係を作るのです。
「小さな約束」を絶対に守る重要性
些細な約束こそが信頼の土台
信頼関係を築くために私が最も意識しているのは「小さな約束を絶対に守る」ことです。
具体例:
- 「次までにこのプリント用意しとくわ」
- 「来週この問題の解説からスタートするね」
本当に些細なことですが、これを絶対に守ります。
生徒は約束を覚えている
大人からすれば些細なことでも、生徒はしっかり覚えています。
昔、「先生、この前言ってたプリントまだですか?」と言われてハッとした経験があります。その約束が守られないと、生徒は「やっぱり大人は信用できない」と感じてしまうのです。
積み重ねが生む信頼
逆に、小さな約束をコツコツ守っていくと「この先生は言ったことを必ずやってくれる」という信頼が生まれます。
その積み重ねが「この先生の言うことなら聞いてみよう」という姿勢につながるのです。
どんなに良い授業をしても、この信頼関係がなければ生徒は本気で聞いてくれません。
生徒の「状態」を読み取る観察眼
入室時の観察が授業の質を決める
生徒が教室に入ってきた瞬間、私たちは何を見ているでしょうか?
観察しているポイント:
- 表情
- 声のトーン
- 姿勢
- 視線の位置
これらから「今日は元気そうだな」「なんか疲れてるな」といった今日のコンディションを把握します。
状態を整えることが最優先
もし「今日はなんか元気ないな」と感じたら、いきなり授業には入りません。
「今日どうした?何かあった?」と聞くと、「実は部活で…」「学校のテストが…」といった話をしてくれることがあります。
心が不安定なときに無理やり勉強させても頭に入りません。
だから私たちは科目を教える前に、まず生徒の状態を整えることを優先するのです。
観察眼は意識的に磨く必要がある
この観察眼は意識して磨いていく必要があります。
「生徒が来た、じゃあ授業始めよう」という流れ作業ではダメなのです。一人ひとりの今日のコンディションをちゃんと見ることが、授業の効果を大きく左右します。
できる講師とできない講師では、同じ授業内容でも効果が全く違ってくるのはこのためです。
言葉の使い方が生徒の可能性を決める
絶対に使わない否定の言葉
私が生徒に対して絶対に言わない言葉があります。
「できない」という否定の言葉です。
「君はできない」「こんなこともできないの?」──こういった言葉を使う講師は講師失格レベルだと考えています。
「まだ」が持つ可能性の力
「できない」ではなく「まだできない」
この「まだ」という一文字をつけるだけで、印象が全く違います。
「まだできない」かもしれないけど「これからできるようになる」というニュアンスで、現状の苦手を把握してもらいながらも可能性を感じさせる言葉を使うべきです。
絶対に言わない質問
「何回言ったらわかるの?」
この言葉も絶対に使いません。これを言われた生徒は「自分はダメなんだ」と思い込んでしまいます。
代わりに使う言葉:
- 「もう一回一緒に考えてみよう」
- 「違う説明の仕方してみるね」
生徒ができないのは生徒のせいではなく、私たちの説明がまだその子に合っていないだけなのです。
「褒める」と「認める」の違い
結果への評価 vs 過程への承認
言葉の使い方でもう一つ大切なのが、「褒める」と「認める」の違いを意識することです。
「褒める」:結果に対して評価すること
- 例:「90点すごいね!」
「認める」:過程をしっかり見ているというメッセージ
- 例:「最近毎日自習に来て頑張ってたもんね」
「認める」がモチベーションを支える
実は「認める」方が生徒のモチベーションに繋がりやすいのです。特にまだ結果が出ていない段階では効果的です。
努力しているのに結果が出ないときは辛いものです。そういうときに「頑張ってるの見てるよ」と言われると、「この先生は自分のことをちゃんと見てくれてる」と感じるのです。
言葉が可能性を広げる
私たちは科目を教える以外に、どういう言葉を使うかをすごく意識しなければなりません。
ポジティブな言葉が生徒の可能性を広げ、ネガティブな言葉は可能性を狭めてしまうのです。
教室環境が示す塾の本質
トイレチェックで分かる塾の質
保護者の方が塾を選ぶときにチェックすべき重要なポイントがあります。
それはトイレです。
塾のトイレの清掃状態を見れば、その塾の本質が分かります。
見えない場所への配慮が全てを語る
トイレは普段あまり注目されない場所です。勉強部屋でもないため、あまり目立ちません。
あまり誰も見ていない場所、目立たない場所にどれだけ手が届いているか──これでその塾が細かいところまで気を配れるかどうかが分かるのです。
トイレの清掃状態が教える塾の姿勢
トイレの清掃ができていない塾:
- 成績管理が雑
- 保護者や生徒への対応も雑
- 生徒一人ひとりの細かい変化に気づけない
トイレがピカピカに保たれている塾:
- 細部まで気を配る文化がある
- 他の部分の質も高い可能性がある
- 生徒への細やかな配慮も期待できる
学習環境は教育の一部
学習環境は目に見えないところで生徒の集中力に影響しています。
散らかった教室より、整理整頓された教室の方が集中できるのは当然です。私たちは毎日の掃除を本当に大切にしています。
生徒たちが「ここで勉強したい」と思える空間を作ることも、私たちの大切な仕事です。科目指導ではありませんが、すごく重要なことなのです。
保護者の方々も、塾を見学するときはぜひトイレをチェックしてみてください。トイレが清潔に保たれているかどうかで、その塾の教育に対する姿勢が見えてきます。
まとめ:土台なくして成績向上なし
今回は「塾講師が科目指導以外で大切にしていること」part1として、関係性と環境についてお話ししました。
お話しした内容:
- 第三の大人としての立ち位置
- 小さな約束を守ること
- 生徒の状態を読み取る観察眼
- 言葉の使い方
- 学習環境の整備
これらすべてが科目指導の「土台」なのです。
この土台がしっかりしていないと、どんなに素晴らしい授業をしても効果は限定的です。
信頼関係がないと生徒は本気で先生の話を聞いてくれませんし、関係性や環境が整っていないとそもそも集中して全力で勉強に取り組めません。
だから私たちは科目を教える前に、まずこの土台作りに全力を注いでいるのです。それが結果的に成績向上に繋がります。
次回予告:動機づけと自立支援
次回のpart2では、この土台の上でどう働きかけていくか、つまり生徒のやる気を引き出す方法や自立を促す技術について話していきます。
今回が「土台作り」、次回は「働きかけ」です。
保護者の皆さんにも、私たちが普段どんなことを意識しながら生徒たちと接しているのか、少しでも伝われば嬉しいです。
もし今、塾を実際に探されている親御さんであれば、こういった指導以前のことができている塾なのか、塾選びの参考にもしていただければと思います。
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