こんにちは、兵庫県加古川市・播磨町で学習塾「ニードモアアカデミー」を運営している三浦です。
前回のpart1では、塾講師が科目指導以外で大切にしていることとして「関係性と環境」についてお話ししました。第三の大人としての立ち位置、小さな約束を守ること、生徒の状態を読み取る観察眼など、信頼関係の土台作りについて解説しました。
今回のpart2では、その土台の上で私たちが実際にどう働きかけているのか、「動機づけと自立支援」について深掘りしていきます。
私たちが本当に目指していること
「その場の点数」ではなく「持続的な学習力」
成績を上げるための具体的な働きかけについてお話ししますが、ここで大切なのは私たちが目指しているのは「その場その場の点数を上げること」ではなく「持続的に自分で勉強できる生徒を育てること」だということです。
点数だけ上げようと思えば、とにかく宿題を出して管理して、できるまで居残りさせる…というやり方もできます。
しかしそれは「やらされる勉強」です。塾を辞めたら勉強しなくなってしまうでしょう。
自立した学習者を育てる
だから私たちが本当に目指しているのは「自分で考えて、自分で計画して、自分で勉強できる生徒」を育てることなのです。
今日はそのための具体的な働きかけについて解説していきます。
外発的動機から内発的動機へ
「なぜ勉強しているのか」を問う
嫌々勉強している子に「なんで勉強してるの?」と聞くと、どんな答えが返ってくるでしょうか?
よくある答え:
- 「親に言われたから」
- 「塾に行かされているから」
- 「怒られたくないから」
これらはすべて「外発的動機」です。誰かに言われたから、外からの圧力で動いている状態を指します。
外発的動機の限界
外発的動機は最初は効果がありますが、絶対にどこかで限界が来ます。
なぜなら本人が本当にやりたいわけではないからです。
長続きさせるためには、「内発的動機」──「自分がやりたいからやる」という状態に持っていく必要があります。
将来から逆算して考える
そのために私たちは「なぜ勉強するのか」を一緒に考えます。
具体的なアプローチ:
- 「将来何したい?」「どんな大人になりたい?」と将来の話から始める
- 「そのためにはどんな力が必要だと思う?」と考えさせる
- 「その力をつけるためには、今の勉強がこんな形で役立つんだよ」と繋げる
こうすると今やっている勉強の意味が変わってきます。
「親に言われたから」ではなく「自分の将来のため」になるのです。
内発的動機が生む変化
これができるようになると、勉強への姿勢自体が全然変わってきます。
だからこそ私たちは科目を教える以外に、こういう対話をすごく大切にしているのです。これが動機づけの第一歩です。
目標設定の技術:階段を作る
遠すぎる目標は機能しない
動機づけができたら、次は目標設定です。
例えば中学1年生の生徒にとって「○○高校合格」という目標は、実は遠すぎて機能しません。2年後、3年後の目標は実感が湧きにくいのです。
ゴールまでの階段を細かく作る
だから私たちがやるのは「階段を作る」ことです。
具体例:
最終目標:「○○高校に合格する」
↓
中期目標:「3学期には数学を4に上げる」
↓
短期目標:「来月の定期テストで80点以上取る」
↓
今週の目標:「今週はこの単元を完璧にする」
この「今週の目標」というところまで落とし込めれば、もう実感が湧きやすくなります。今週なら具体的にイメージできるからです。
小さな成功体験の積み重ね
小さくても目標を達成したら「できた!」という成功体験になります。
この小さい成功の積み重ねが自己効力感を育てるのです。
自己効力感とは「自分はできる」という感覚のこと。これがとても大事で、「自分はできる」と思えるようになると、勉強への取り組み方が変わってきます。
階段を一段ずつ登っていく感覚──これが目標設定のコツです。科目指導ではありませんが、成績向上には絶対必要なことなのです。
「答えを教えない」覚悟
すぐに答えを教えるリスク
生徒から「先生、ここわかりません」と質問されたとき、すぐに答えを教えるのは実は良くありません。
答えをすぐ教えるのは講師側からすると楽です。説明して答えを言って、はい次、と進められます。
しかしそれをやってしまうと、生徒は「またわからなかったら先生に聞けばいい」と思考を停止するのです。
自分で考えさせる部分を作る
だから私たちがやるのは以下のプロセスです:
- 「どこまでわかったか」を確認する
- 「何がわからないのか」を把握する
- その子に必要な部分のヒントを与える
- あくまでも生徒に考えさせる
「ここまではわかるんだけど、ここからがわからない」と生徒が自分で言語化できたら、もうほぼ解決です。
自分で問題点を特定できれば、あとは少しヒントを出すだけで解けたりします。
一生使える問題解決力
これができるようになると、家で一人で勉強しているときにも「自分は今どこで躓いているのか」と考えられるようになります。
これは受験が終わっても使える力です。高校に行っても、大学に行っても、社会に出ても使える「自分で問題を解決する力」なのです。
講師に求められる覚悟
だから私たちは「答えを教えない」という覚悟を持たなければいけません。
すぐに答えを教えた方が生徒はわかった気になるし、講師も楽です。でもそれではダメ。ちゃんと考えさせる──これが本当の教育だと考えています。
家庭との役割分担
家で教えるとケンカになる理由
よく保護者の方から「家で子どもに勉強を教えていたらすぐケンカになってしまう」という相談を受けます。
特に小学生の親御さんに多い悩みです。
なぜケンカになるのか:
- 親子だと感情的になりやすい
- 「なんでこんなこともわからないの!」と思ってしまう
- 親子だからこその感情が入る
- 子ども側も素直に聞けない
- 「お母さんの教え方わかりにくい」
- 「お父さんに聞いてもイライラされる」
親子関係だからこそうまくいかない部分があるのです。
家庭の役割は「見守り」と「環境整備」
だから私たちが保護者の方にお願いしているのは「教えること」ではなく「見守ること」と「環境を整えること」です。
家庭でできること:
- 「勉強しなさい」ではなく「応援してるから」という声かけ
- 勉強しやすい静かな環境を作ってあげる
役割分担の明確化:
- 塾の役割:勉強やそのやり方を教えること
- 家庭の役割:安心して勉強できる環境を作ること
この役割分担を明確にすることも、塾としての重要な仕事の一つです。
受験の先を見据えた指導
合格はゴールではない
ここまで勉強する意味、目標設定、答えを教えない姿勢について話してきましたが、全てにおいて私たちが一番意識しているのは「受験の先を見据える」ということです。
特に子どもたちは「志望校合格」をゴールにしがちですが、私たちからするとそれは全然ゴールではありません。
合格はあくまで通過点で、本当に大切なのはその先の人生なのです。
育てたいのは「自立する力」
だから私たちが受験勉強を通して育てたいのは「自分で考えて、自分で決めて、自分で行動する力」です。
自立に必要な力:
- 自分で目標を設定する
- 自分で計画を立てる
- 自分で実行する
この力があれば大人になっても通用します。
だから私たちは目の前の点数だけを追いかけるのではなく、「この子が将来自立して生きていける力」を育てることを意識しています。
まとめ
今回のpart2では、動機づけと自立支援についてお話ししてきました。
お話しした内容:
- 外発的動機から内発的動機への転換
- 目標設定の技術(階段を作る)
- 答えを教えない覚悟
- 家庭との役割分担
- 受験の先を見据えた指導哲学
part1では信頼関係と環境という「土台」の話をして、part2ではその上でどう働きかけるかという「技術」の話をしてきました。
科目指導以外の部分でも、絶対必要なことは多いということがお分かりいただけたかと思います。
塾選びの本当のポイント
塾を選ぶときは「合格実績」や「講師の学歴」といったところを見がちですが、それ以上に大事なのが今日話してきたような「科目指導以外の部分」をちゃんとやっている塾かどうかです。
体験授業や面談で確認すべきこと:
- その塾の講師が「どういう言葉を使うか」
- 「どういう質問をするか」
- 「生徒とどう関わっているか」
これらを観察してみてください。
私たちの本当の仕事
私たちニードモアアカデミーも、今日話してきたようなことを日々実践しながら生徒たちと向き合い続けていきます。
科目を教えることはもちろん大切ですが、それ以上に「自立した学習者を育てること」──これが私たちの本当の仕事だと思っています。
2回にわたってお送りした「塾講師が科目指導以外で大切にしていること」が、保護者の皆さまの塾選びや、お子さまとの接し方の参考になれば幸いです。
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